第1章「品詞と文の要素」で、文の要素と品詞、そして両者の差異と対応関係について十分に学んだので(あやふやな人はもう一度読み返してください!)、続いて、この基礎のもとに、英語の文型、いわゆる、5文型を取り扱っていきましょう。
突然ですが、5文型を思い出せるでしょうか?
SV、SVC、SVO、SVOO、SVOCです。
「あれ、さっき学んだMがいない」なんて思った人はいないでしょうか?前章で説明した通り、MだけはS・V・O・Cとは違い、文の成立に不可欠な「主要要素」ではないため、文型の構成要素にはならないのです。
実際に5文型のなかにMが現れていないことが、そのことを明確にしています。
ただ、Mはこのように文の構造の中に位置付けられていないことによって、逆に、あらゆる場所に現れることができることにも、注意しておきましょう。
目次
1、なにはなくとも、まずは5文型を確認!
1-1、第1文型 SVだけで、終わっていい!
小難しいことをいろいろ考える前に、まずは5文型を、例文を作りながら確認していきましょう。はじめは第1文型から。第1文型は、SV。Vの後ろに何もないことから明らかなように、動詞で終わってよい文です。
動詞で終わってよいとは、どういうことでしょうか?動詞で文が終わってよい動詞と、動詞で文が終わってよくない動詞があるわけです。
対象(目的語O)がいらない動作なら、文が動詞で終わっても大きな問題はないはずですよね。
では、目的語Oがいらない動作とは?「殴る」は殴る相手が必要ですが、歩くや走るや死ぬや生きるには、動作の対象は必要ないでしょう。
こう考えると、非常に拙いものですが、以下のような例文が思いつくはずです。
He runs.
SVは、SVしかなく、それで終わりなわけですが、上で述べた通り、Mであれば、いくらでも、様々な場所に付け加えることができます。いままで見たMといえば、副詞と前置詞句でしたね。これも幾つか例を見ておきましょう。
He runs fast. SVM←fastは副詞でrunsを修飾
He runs in the park. SVM
←in the parkはrunsを「「公園で」走る」と修飾しているので副詞的な前置詞句。
He sometimes runs. SMV
←頻度を表すsometimesなどの副詞は普通、一般動詞より前に置く。
On the morning of September 11 he runs in the park. MSVM←主語の前にMがある。
さて、以上の考察から、まず文型が「動詞」で決まることが分かったと思います。対象(目的語)がいらない動詞だけが、SVという第1文型の文を作れるのです。
逆にいうと、これはVのあとに主要要素となるような単語がなく、SVの第1文型であるということが分かると、その事実から、Vになる動詞の意味の方向性が限定され、その意味がある程度は推測可能であるということにもなります。
目的語がいらない動詞といえば、Sの存在(be、exist、lie…)を表す動詞や、Sの移動を表す動詞(go、come、walk、run…)なのです。
1-2、第2文型 SVCのSとCには、「S = C」の関係がある!
第2文型はSVCです。SVCというわけですから、動作に目的語O(=対象)はいらないものの、Sを補って説明する語Cが必要だというわけですね。さらに、Cは、Sを補って説明するわけですから、「S = C」の関係が成り立つわけです。
このような条件を満たし、第2文型を作る動詞は、まず、なにはなくともbe動詞です。第2文型といえば、まずはbe動詞!これは100回くらい唱えておきましょう。
She is cute. (形容詞がCになっているパターン)
She is my classmate. (名詞がCになっているパターン)
She = cuteなのですし、She = my classmateなのです。
さて、SVCのVが「S = C」の関係を成り立たせるものでなければならないのだとしたら、そのようなVは非常に限定されていることになるはずです。
第2文型の一番の典型となるbe動詞は、「S = C」ということだけを純粋に表現する、「SはCである」という意味です。
他に、どんな動詞があると思いますか。ほとんどが、「SがCになる」という変化を表す動詞か、「SはCだと感じられる・見える・分かる」といった知覚・認識を表す動詞なのです。
・「SはCである」(S = C)
She is silent. She keeps silent. She remains silent. …
・「SはCになる」(変化)
She became a doctor. She got angry. She went mad. …
・「SはCに感じられる」「SはCだと分かる」(知覚・認識)
She looks sad. She smells sweet. She turned out dead…
一応覚えておいてよいことですが、第1文型と第2文型で使われる動詞は、目的語Oがない、つまり、そのような動作は「他のもの(=O)」を動かさず、主語Sだけが動くので、「自動詞」と言います。「自」分だけが「動」くというわけです。
1-3、第3文型 もっともスタンダードな文型、SVO
さて、第3文型以降は、主語Sだけがいわば一人芝居的に動く「自動詞」の世界ではなく、Sが「他」のもの、つまり、目的語Oを「動」かす、「他動詞」の世界に入ります。
第3文型は、SVO、主語Sが、目的語Oに対して、Vという動作を行う、ある意味ではもっともスタンダードな文型です。
I play soccer.
I study English.
soccerはplayという動作の対象であり、Englishはstudyという動作の対象になっていることを確認してください。動作の対象になるものが、目的語Oなのでした。
SVOは非常に幅広いので、文型から意味を限定することはできませんが、特定の前置詞と連語関係(collocation:コロケーション)を結ぶ語が多く、その前置詞との関係から意味が推測できることがあります。
The weather prevented us from going hiking.
→天候が、私たちがハイキングにいくことを妨げた。
Her mother keeps her from being independent.
→彼女の母が、彼女が自立するのを妨げている。
fromは、「〜から」という出自・由来の意味から発展して、「〜から離れている」という「分離」の意味が出てきます。なので、上の例文のように「〜から離しておく→〜するのを妨げる」という意味と相性がいいのです。
というわけで、前置詞と動詞の連語関係を知っておけば、前置詞から動詞の意味が推測できる(fromがある→妨げるかも!)のですが、その裏面として、前置詞との連語関係を見抜けないがゆえに、文の意味をとることができない場合も、本当に本当に多いのです。
動詞を覚える際は、前置詞との連語関係に死ぬほど注意してください。
ところで、少し話題をずらすと、keepが、She keeps silentという形で、第2文型でも登場したのを覚えていますか?
第1文型のところで述べたように、文型は動詞で決まりますが、それは特定の動詞と特定の文型が一対一対応するという意味ではありません。
keepなら、よく使われるものに限定しても、SVC・SVO・SVOCの三つの文型を取ることができますし、それぞれ意味が変わります。SVCでは、「SがCのままである」だったのに、今見たSVO(from A)では、「Sが、OをAから遠ざけておく(from A)」と、かなり違う意味になっています。
同じ単語でも文型によって意味が違う、このこと一つをとっても、文型を見抜くことの重要性が分かります。文型が分からなければ、動詞の意味を決定できないのです。では、どう文型を見抜くのか?それは、一通り全部の文型を見てから考えましょう。
1-4、第4文型 SVO1O2は、「O1にO2を与える」が基本形!
続いて、目的語Oを二つとるSVOOに行きましょう。「目的語Oが二つもあるって、どういうこと?!」と思われるかもしれませんが、1番目のO(O1)は、日本語の「に」にあたり、2番目のO(O2)が日本語の「を」にあたると考えると、わかりやすいです。
例文として、左に第4文型を、右側にそれを第3文型に書き換えたものを掲げておきます。
I gave her a chocolate.(SVOO)→ I gave a chocolate to her.(SVOM)
→私は彼女「に」チョコレート「を」あげた。
I bought him a desk.(SVOO) → I bought a desk for him.(SVOM)
→私は彼「に」机「を」買ってあげた。
再度、確認しておくと、Oになれるのは名詞だけであり、それも前置詞が付いていない名詞だけです。右の例文にあるような「前置詞 + 名詞」は形容詞か副詞となり、Mになるのですから、Oにはなれません。今回は動詞にかかるので副詞です。
ここから、SVOOでは、Vのあとに、前置詞のつかない名詞が2つあることが帰結します。その1番目が「(人)に」にあたり、2番目が「(モノ)を」にあたるのです。そして、「に」「を」とくれば「与える」ですから、第4文型の多くは「与える」の意味を基礎にしています。
ちなみに、O1のことを間接目的語、O2のことを直接目的語ということもあるので、覚えておくと良いでしょう。「を」にあたるO2の方がより直接的な目的語なのですね。
これは、第3文型への書き換え(上の例文の右側)を行なった時に、目的語として残るのがO2であることからもわかるでしょう。
第3文型への書き換えで、人にあたる語の前にtoを使うかforを使うかという(一見、かなりくだらない)問題がありますが、前置詞のイメージを固める上で重要なので、一応触れておきましょう。
toとforの意味は似ていますが、toはどちらかというと「到達点」を表し、forは「方向性」を表します。
したがって、動作の時点でO2がO1に「到達」していれば「to」、必ずしもそうでなければ「for」を使うのが原則です。上の例文でも、そうなっていることを確かめてみてください。
1-5、第5文型 SVOCでは、OとCの間に「O = C」の関係が成り立つ
最後はSVOCです。このOCの間には、SVCで「S = C」だったのと同様、「O = C」が成り立ちます。言い換えると、「OC」には、いわば「O be C」という形で、「SVC」が隠れているのです。
「O = C」に「V」が関係してくる、となると、Vの意味はかなり限定されます。基本的には、「O = Cにする」か、「O = Cだと考える・分かる」です。
The news made me sad. (meをIに変えて、I am sad.が成り立つ)
→そのニュースが私を悲しくした。
We call her Maki. (herをSheに変えて、She is Maki.が成り立つ)
→私たちは彼女をマキと呼んでいる。
I found the homework easy. (The homework is easy.が成り立つ)
→私はその宿題は簡単だと分かった。
I think her honest. (She is honest.が成り立つ)
→私は、彼女は誠実だと思う。
SVCのCと、SVOCのCを区別するため、前者を主格補語、後者を目的補語ということがあります。主語を補うのが主格補語、目的語を補うのが目的補語というわけです。いずれにせよ、Cになれるのは名詞か形容詞だけであることを(上の例文も見ながら)確認しましょう。
(以下は発展的な内容なので、初心者の人は次の節まで飛ばしてください。)
また、第5文型には、ちょっとした派生形 もあることも知っておかなければなりません。それが「SVO to V」です。ここでは「Oとto V」の間に(「SC」関係ではなく)「SV」関係が成立しています。
このことを、典型的な5文型では、OとCの間に「O = C」の関係が成立していたことと比較してみましょう。やはり、少し違いますが、何がしか似てはいますから、「派生形」といった言い方もそう悪くはないでしょう。
She told him to buy some chocolates. (He buys some chocolates.が隠れている)
→彼女は彼にいくつかチョコを買うように言った。
toは「方向性・到達点」が原義で、基本的にはどこかへ向かっていく積極性を表しますから、このような「O to V」を後ろに取れる、上のtellのようなVは、基本的には積極的な意味を持ちます。
また、この派生形のうち、さらに特殊なものとして「SVOV(原型)」という形、つまり、「to」がいらない形を作る動詞もあります。
それが使役動詞とよばれる、make、have、letと、知覚動詞とよばれる、hear、see…です。
She made him buy some chocolates. (He buys some chocolates.が隠れている)
→彼女は彼にいくつかチョコを買わせた。
She saw him buy some chocolates. (He buys some chocolates.が隠れている)
→彼女は彼がいくつかチョコを買ったのを見た。
どちらも、himとbuyの間にtoがないこと、そのため、一見すると文の中にVが二つあるように見えることに、注意してください。しかし、文の中心となるVは(接続詞や関係詞がなければ)一つしかないため、最初にあるSの直後のVが本当の動詞であり、後者は先のto Vと同様の「準動詞」(第2部参照)なのです。
2、文型を考える—文型理論の意義・判別法
2-1、5文型の理論の意義
さて、前節では、とりあえず5文型を確認しましたが、そもそも5文型などというものには何の意味があるのでしょうか。ここでは、そのことを確認していきましょう。
まず、なにはなくとも言っておきたいのは、英語の文のほぼすべてが5つの文型に還元できることの意味は大きいということです。みなさんも、数学の公式が5個しかないと言われれば、その5個ぐらいはちゃんと理解し暗記しておこうという気になるでしょう。
より詳しく、文型の意義を見ていきましょう。
第一に、第3文型SVOのところで述べたことですが、同じ動詞でも様々な文型で使うことができ、それに応じて意味が変わります。すると、文型が判別できない限り、動詞の意味が決定できず、結果として文の意味が理解できないことになってしまいます。
My mother kept quiet.
→SVCだから、keepは、「SはCのままである」
My mother kept me from going abroad.
→SVO from Aだから、keepは、「OをAから遠ざけておく・Aするのを妨げる」
My mother kept the vegetables fresh.
→SVOCだから、keepは「OをCの状態に保つ」
文型を理解できないことが、しばしば致命的であることが分かるでしょう。
そして第二に、特にSVC、SVOO、SVOCに言えることですが、文型がわかれば、動詞の意味が推測できるという利点があります。
SVCなら、「S = C」なので、「SがCである」「SがCになる」「SがCに見える・思われる・感じられる・分かる」などの意味が大半です。
SVOOは、たいていの場合、「O1にO2を与える」が意味の基礎になります。
SVOCなら、「O = C」なので、「OをCにする」「OがCだと分かる・考える」などの場合が多いのです。これによって、動詞の語義の知識があいまいな場合でも、大きく外さない解釈をすることができるはずです。
2-2、5文型の判別法:理論編
とはいうものの、5文型を判別できなければ、以上の議論は意味を持ちません。次はその判別法を学びましょう。
ただ、判別の前に、5文型の共通点を見ておくべきです。それは、すべてが「SV」ではじまるということです。
ここから、5文型を判別する前に、まず「SV」を発見することが重要であることが分かります。
SVをどうやって見つければいいでしょうか?「S」になれるのは名詞ですから、文を先頭からみていって、形容詞でも副詞でもなく、最初にある「名詞」をSだと考えます。
また、繰り返しになりますが、「前置詞 + 名詞」は「形容詞」か「副詞」になり、ほぼMとして働くので、ここで「名詞」といっても、それは「前置詞がついていない」名詞限定です。
「最初に出てくる前置詞のついていない名詞がSである」は、もちろん、例外はありますが、あらゆる英文解釈の基礎となる大原則ですので、頭に焼き付けておきましょう。
そのようにSを確定したら、それに対応するVを探していきます。ここまではどんな文でも同じです。
ただ、Vの後ろが違います。文型はVで決まる、ある意味で5文型とは動詞の用法の分類です。では、具体的にどのように文型を判別していけばいいでしょうか。
文型とは、文の主要要素OとCに関する違いなので、まずMを取り除いて考えることが必要です。そういうわけで、M、つまり、「副詞」と、限定用法の「形容詞」と、ほぼMになる「前置詞句」を括弧に入れた上で、Vの後ろを見ていきます。その後は以下のプロセスに従います。
要素数0→SV
要素数1かつ「形容詞」→SVC
要素数1(Xとする)かつ「名詞」→「S = X」ならSVC、そうでなければSVO
要素数2かつ、2つ目が「形容詞」→SVOC
要素数2かつ、2つ目(X)が「名詞」→「O = X」ならSVOC、そうでなければSVOO
2-3、5文型の判別法:実践編
具体的にいくつかやってみましょう。
①He stays at a hotel in New York.
Heが最初にある前置詞の付いていない名詞なので主語S。続くstaysが動詞Vで「滞在する」。
そのあとにもいろいろありますが「at a hotel」「in New York」とも、前置詞がついているのでM。結論としてSV(MM)の第一文型。stayは第1文型の動詞の中の「存在」の類型に入ります。
「彼は(ニューヨークのホテルに)滞在している」
②She still remains a good student.
Sheが最初にある前置詞の付いていない名詞なので主語S。次に動詞Vが出てくるかと思いきや、副詞のstill(いまだに)が挟まっていて、これはM。その次のremains(~のままである)がV。
続く、a good studentを見て、「あ、形容詞と名詞の二つの要素がある!」「SVXXだ!」と思った人はいないでしょうか。
これは間違っています。詳しく見ていくと、まず「冠詞」の「a」は「名詞」にくっつくものです。ここでは名詞のstudentと組み合わさって、「a…student」というつながりを作っています。
形容詞のgoodはその名詞のかたまりに含まれているので、studentを「限定」的に修飾する修飾語Mとしてしか働けません。冠詞と名詞に囲まれてしまった形容詞はMで、Cとして、つまり、文の主要要素として働くことはありえないのです。
こういうわけで、この文はVの後に名詞的な要素が一つある「SVX」であることがわかりました。次に、上で書いたプロセスにしたがい、a good studentというXとSであるSheとの関係を考えてみましょう。
「S = X」と考えられれば、SVC、そうでなければ、SVOでした。
ここで話の流れとして、「She = a good student」でも違和感がないので、ひとまずSVCと考えてよいでしょう。実際、remainは「Cのままである」という、第2文型をとる動詞なのです。訳は、「彼女はいまだに優等生のままである」とでもするとよいでしょう。
もちろん、remainを知っていれば一番ですが、知らなくても、文型の理論を使って、上で考えたようにSVCなのではないかという仮説にまで到達できれば、「S = C」が文の大意であることまではつかめるわけです。
③She made me a bag.
Sheが最初にある前置詞の付いていない名詞なので主語S。次のmadeが動詞V。今回は、meとa bagの二つの前置詞のない名詞があるので、正真正銘のSVXX。
ここまできたら、XとXの関係を考えるのでした。「X = X」ならSVOC、そうでなければ、SVOOでしたね。今回、「me = bag」はあり得ないので、結論としては、SVOO、SVO1O2は「O1にO2を」なので、「彼女が私にバッグを作ってくれた」ということになります。
これが、She made me a good student.であれば、「me = a good student」なので、「OをCにする」となり、「彼女が私を優等生にした」ということになるでしょう。
どれも初歩的な例ですが、こういったところをまずは完璧に理解することが何より重要です。