第2.5章 命令文・感嘆文・疑問詞疑問文と文型

 先の第2章「動詞と文型」で述べた通り、「ほとんどすべての英文は5文型に還元できる」。確かにその通りなのですが、いままで考えてきたのは「平叙文」、つまり、事実を語る「肯定文」と「否定文」だけです。

 しかし、英語には、平叙文以外にも、「命令文・感嘆文・疑問詞疑問文」などが存在します。

 命令文は、現にある事実を語るのではなく、これからなされるべき指示を語り、感嘆文は驚きの感情を表現します。そして疑問詞疑問文は、分からないことについて5W1Hを用いて、具体的に尋ねます。

 これらは「平叙文」とは違う形を持っていますが、大事なことは、すべて「平叙文」を何らかの仕方で変形することで作られる(と考えることができる)ということです。この意味では、前章で述べた5文型自体は維持されているのです。

 かくして、本章のポイントは、「平叙文」からどのような変形が行われることで、「命令文・感嘆文・疑問詞疑問文」がつくられるかを見てとることです。これらを常に「平叙文」と関係づけることで、5文型を基礎とする英語の構造のシステマチックさを感じることができるはずです。

 このページでは、「平叙文」と「Yes/No疑問文」の確認からはじめて、「命令文・感嘆文・疑問詞疑問文」を取り扱っていきましょう。

1、平叙文(肯定文・否定文)とYES/NO疑問文

 まず、平叙文(肯定文・否定文)・YES/NO疑問文の作り方をおさえましょう。これに関して、英語の文は三つに分類できます。すなわち、be動詞の文、一般動詞の文(be動詞以外の動詞)、助動詞の文です。

1-1、be 動詞の文

 
 否定文→be動詞の後ろにnotをつける。
 疑問文→be動詞を文頭に出し、文末に?マークをつける。答える時もbe動詞。

 例:His house is very large. 
   否定→His house is not [isn’t] very large.  
   疑問→Is his house very large?  
    →Yes, it is.
    →No, it isn’t.

 また本サイトでは扱っていませんが、進行形(be Ving)、受動態(be V p.p.)などもbe動詞を使うため、上と同じように平叙文(肯定文・否定文)とYES/NO疑問文を作ることになります

1-2、一般動詞(be動詞以外の動詞)の文

 否定文→do、does、did + notを動詞の前に置く。三単現の場合にdoes、過去の場合にdid。
 疑問文→do、does、didを文頭に出し、文末に?マークを。答える時もdo、does、did。

 例:His house stands on the hill.  
  →His house does not [doesn’t] stand on the hill.
   (↑三人称単数のsがdoesに吸収される)
  →Does his house stand on the hill?
   →Yes, it does.
   →No, it doesn’t.

1-3、助動詞の文

 否定文→助動詞の後ろにnotを置く。
 疑問文→助動詞を文頭に出し、文末に?マークを置く。答える時も助動詞。

 例:He can swim very fast.
  →He cannot [can’t] swim very fast.
  →Can he swim very fast?
   →Yes, he can.
   →No, he can’t.

2、命令文:主語なんていらない!

 相手に命令や依頼をする命令文は、動詞の原形で始めます。

 Keep the room clean. 否定→ Don’t keep the room clean.
 Be quiet in this room. 否定→ Don’t be quiet in this room. (be動詞でもdoを使う!)

 「平叙文」との違いは、Sが(現に対面しているYouであることが自明なため)欠けていることです。Vより後の文型の構造自体は「平叙文」と全く同じです。上の例文は(S)VOCの第5文型、下の例文は(S)VCの第2文型です。

 平叙文とのもう一つの違いは、否定する場合、be動詞でもdoを用いることです。

 平叙文のbe動詞の文では、否定する際にはnotを付け加えるのみで、doは不要だったことを思い出しておきましょう。

 I am a student. 否定→ I am not a student.

3、感嘆文:驚くべきものは、前へ!

 驚きを表現する感嘆文では、HowやWhatを使い、驚きの対象となっている部分を文の前に持ってきます。Howは「形容詞」か「副詞」、Whatは「名詞」を強調するという違いがあります。

 驚きの対象となっている要素がHowやWhatに引っ張られて前に出ただけで、文型の構造自体は保存されています。なので、文意が取れない場合には、前に出た要素を元の位置に戻し、文全体を「平叙文」にして、考えてみましょう。

How beautiful this valley is!
 (この谷はなんて綺麗なんだろう!)
↑ This valley is beautiful.のCであるbeautifulが驚きの対象となり、前に出た。beautifulは形容詞なので、Howを用いる。

How fluently she speaks Japanese!
 (彼女はなんと流暢に日本語を話すのだろう!)
↑ She speaks Japanese fluently.のMであるfluentlyが驚きの対象となり、前に出た。fluentlyは副詞なので、Howを用いる。

What a large garden your house has!
 (あなたの家はなんて大きな庭をもっているのだろう!)
↑ Your house has a large garden.のOであるa large gardenが驚きの対象となり、前に出た。a large gardenは全体として名詞なので、Whatを用いる。

 以上が、感嘆文ができる「仕組み」です。感嘆文を自分で作るときも、読むときも、平叙文との対応関係、つまりは5文型を意識することが重要です。

 感嘆文とは、5文型に従ってできた平叙文から、驚きの対象となるものをHowやWhatで前に引っ張りだした文なのです。

4、疑問詞疑問文:疑問副詞?疑問代名詞?疑問形容詞?

 英語の疑問文には2種類あります。Yes/Noで答える「Yes/No疑問文」と、何か具体的な言葉で答える「疑問詞疑問文」です

 このページの最初で見たように、be動詞の文ならbe動詞を前に出す、一般動詞の文ならdo/does/didを文頭に置く、助動詞を使った文なら助動詞を前に出す。こうして作られるのは、「Yes/No」で答えられるYes/No疑問文です。

 しかし、それ以外にも疑問文が存在します。「何?」「誰?」「いつ?」など、具体的な答えを求める、いわゆる、5W1Hの疑問詞を使った疑問文です。これはそれなりに複雑なので、丁寧に説明していきます。

 出発点はやはり平叙文です。疑問詞を使った疑問文の作り方の原則は、平叙文で「分からない」ところを疑問詞に変えて先頭に出し、後ろをYES/NO疑問文と同じ語順とすることです。

 以下のような例文を考えてみましょう。

 Tom carried a big suitcase in the Santa Street yesterday.
 (トムは昨日サンタ通りで大きなスーツケースを運んでいた。)

・「何を」運んでいたか分からない場合→分からない部分「a big suitcase」を「何=what」に変えて文頭に出し、後ろをYES/NO疑問文と同じ語順にする。

 →What did Tom carried ◯ in the Santa street yesterday? (◯はwhatの元の位置)

・「どこで」運んでいたか分からない場合→分からない部分「in the Santa street」を「どこ=where」に変えて文頭に出し、後ろをYES/NO疑問文と同じ語順にする。

 →Where did Tom carried a big suitcase ◯ yesterday? (◯はwhereの元の位置)

・「いつ」運んでいたか分からない場合→分からない部分「yesterday」を「いつ=when」に変えて文頭に出し、後ろをYES/NO疑問文と同じ語順にする。

 →When did Tom carried a big suitcase in the Santa street ◯ ? (◯はwhenの元の位置)

 ここで「whatとwhere・when」では大きな違いがあることに気づいたでしょうか?

 whatは「名詞:a big suitcase」の代わりをしているのに、whereやwhenは「副詞(yesterday)」か「副詞の働きをする前置詞句(in the Santa street)」の代わりをしているのです。

 なので、ここでのwhatのことを疑問「代名詞」と呼び、whereやwhenのことを、疑問「副詞」と呼びます。

 さて、ここで、また最初の文に戻り、今度は、Tomが分からないとしてみましょう。

 Tomは人ですから「誰=who」を使います。このwhoは、疑問「代名詞」でしょうか、疑問「副詞」でしょうか。もちろん、Tomは名詞なので疑問「代名詞」です。

 ただ、ここでいままでと違うのは、Tomは主語で文頭にあるために、「whoに変えて」まではいいとしても、「先頭に出す」という操作は必要ないという点です。

 そして、ここが重要なのですが、この場合、後ろを動詞を主語より前に出す疑問文の語順にする必要はありません(というか、いまやwhoに代わった「主語」より動詞を前に出すことが不可能なので、できません)。

 Tom carried a big suitcase in the Santa street yesterday.

 → Who carried a big suitcase in the Santa street yesterday?

 主語を疑問「代名詞」にして疑問文を作る場合、後ろを疑問文の語順にする必要はない、というか、できないということは、しっかり理解しておきましょう。

 また、このようなことが疑問「副詞」のwhenやwhereでは起こりえないことも、しっかり、理解しておきましょう。

 whenやwhereは「副詞」の代わりとなるので、名詞である主語Sの代わりをすることはありえないからです。whenやwhereの疑問文は常に疑問文の語順です。

 ここで、「疑問「代名詞」があり、疑問「副詞」があるとすれば、疑問「形容詞」もあるのかな?」なんて、筋のいい疑問を持った人はいるでしょうか。実際、whichやwhatには、疑問「形容詞」の用法が存在しています。

 ・What kind of fruits do you like?
  
 whatはkind(種類)という名詞にくっついているから「形容詞」。You like … kind of fruits.の…の部分が分からないので、そこがwhatに代わり、kind of fruitsという名詞を引き連れて文頭に出ています。

 whatを「文頭に出す」という操作が行われているので、後ろは疑問文の語順になります。

 ・Which car is yours?

 whichはcarという名詞にくっついているから「形容詞」。… car is yours.の…が分からないからwhichに代わったわけです。

 今回、疑問の対象が「主語Sにつく形容詞」だから、「文頭に出す」という操作は行われておらず、したがって、後ろは疑問文の語順になりません(なれません)。

5、本章のまとめ

 本章では、命令文・感嘆文・疑問詞疑問文という、事実を語る「平叙文」とは違う種類の文を扱いました。

 命令文は、事実を語るのではなく、指示を語り、感嘆文は驚きの感情を語ります。疑問詞疑問文は、分からないことについて5W1Hを用いて、具体的に尋ねるのです。

 本章の最初で、以下のように述べたことを覚えているでしょうか?

 かくして、本章のポイントは、「平叙文」からどのような変形が行われることで、「命令文・感嘆文・疑問詞疑問文」がつくられるかを見てとることです。これらを常に「平叙文」と関係づけることで、5文型を基礎とする英語の構造のシステマチックさを感じることができるはずです。

 この観点から、本章をまとめておきましょう。

 ・命令文:平叙文からSを落とす。

 ・感嘆文:平叙文の中で驚きの対象となる「形容詞・副詞」をHowとともに文頭に出す。
     :平叙文の中で驚きの対象となる「名詞」をWhatとともに文頭に出す。

 ・疑問詞疑問文:平叙文の中で分からない部分を適切な疑問詞に変えて文頭に出す。
        :このように「文頭に出す」場合、後ろを疑問文の語順にする。
        :対して、主語が疑問の対象となる場合、後ろは疑問文の語順にならない。

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第2章 動詞と文型
★第2部 Vの形にまつわる、さまざまな小島

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