ミシェル・ウェルベックを読む

 このカテゴリは、現代フランスの作家、ミシェル・ウェルベックに関する記事を収録していきたいと思います。

 ウェルベックは、その理論家肌の抽象的な思考法、その陰鬱な詩的想像力、そして俗悪なまでの暴露癖を駆使して、現代を描き出す作家といえるでしょう。彼はある詩集の中で以下のように述べています。

あなたが他者たちにたじろいだ憐れみと軽蔑のまざりあったものを抱かせるようになったとしたら、あなたは正しい道の上にいると思っていい。あなたは書き始めることができるだろう。

 他者たちに「たじろいだ憐れみと軽蔑のまざりあったもの」を抱かせるような陰鬱な状況に置かれた自分を、ごろりと投げ出すように暴露すること、しかしながら、同時に、それを理論の抽象力によって世界全体へと拡張すること、そこにウェルベックを現代の「文学者」たらしめたものがあるといっていいでしょう。

 そのテーマは現代における(1)セクシュアリティと愛の排反性、(2)セクシュアリティの優位における愛の終焉、(3)その悲惨な帰結、(4)そして未来における、この問題の空想的な解決策としての「セクシュアリティの彼方」の素描、といったものの周りを巡っています。

 まずは(1)(2)(3)までを扱った処女小説『闘争領域の拡大』の徹底解読を記事としておきたいと思います。(4)のテーマが現れてくる第二作『素粒子』以降の作品についても、時間的余裕ができ次第、順次書いていくつもりです。

徹底解読:ミシェル・ウェルベック『闘争領域の拡大』

徹底解読:ミシェル・ウェルベック『闘争領域の拡大』

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