第9章 接続詞と関係詞

 ここでは「節」を作るものの中心である「接続詞」と「関係詞」について簡単に概観します。「英文法の地図」を見ていただければわかる通り、「節」の部分は「間接疑問」以外、すべて「接続詞」か「関係詞」です

 「節」を作るわけですから、「接続詞」も「関係詞」も、そのなかにSVを含むまとまりをつくり、まとまり全体として文の中で一つの品詞、つまり、「名詞・形容詞・副詞」として、その結果としてSやOやCやMとして働くものであることは分かるでしょう。

 また、「節」の中のSVは、準動詞の場合と同様、これまた5文型の構造を保持しており、何か新しい文型を生むわけではありません。

 その意味で、「準動詞 ≒ 句」の場合と同様、これまた誤解を恐れずに言えば、「節」は英文の構造を「複雑」にはせず、単に「重層的」にするだけなのです。

 さて、ここでの疑問は、「では、「接続詞」と「関係詞」は何が違うのか」というものであるべきです。「接続詞」と「関係詞」の間に何か本質的な違いがあるからこそ、このような用語な違いが存在しているはずだからです。

 答えを言ってしまうと、「接続詞」は「節の中でなんらの役割を持たない」のに対して、「関係詞」は「節の中でなんらかの要素の代わりをするという役割を持つ」という違いがあるのです。本章では、この点だけを中心に両者について簡単に見ておきましょう。

9-1、接続詞

 ここでは接続詞について二つの例に即して見ていきましょう。

(1)I think that he is honest.

 この(1)の文ではthatが「接続詞」です。he is honestという第2文型の文SVCを「より大きな文全体の中で一つの品詞として働くまとまり = 節」へとまとめる機能を担っています。

 この節は何節でしょうか。いいかえれば、どんな品詞として働いているでしょうか。文全体を考えてみると、thatがまとめるthat節は、文全体の動詞Vであるthinkの目的語ですから、「名詞節」であることがわかります。

(2)If it rains tomorrow, I will stay home.

 この(2)の文のifも、「接続詞」です。ifは、it rains tomorrowという第1文型の文SVを「より大きな文全体の中で一つの品詞として働くまとまり = 節」へとまとめる機能を担っています。

 では、この節は何節でしょうか。いいかえれば、どんな品詞として働いているでしょうか。

 ifがまとめる部分、「もし明日雨が降ったら」は、「家にとどまるつもりだ」という文全体のなかの「動詞V」にかかっていますから、このif節は「副詞節」であり、文の中での役割という観点からすれば、「M(修飾語)」であることがわかります。

 さて、上のthatは「文SV…」を一個の名詞のかたまりである「名詞節」に変える単なる箱で、意味はありません。強いて言えば、「ということ」です。

 対するifは、「文SV…」に「もし~ならば」という条件の意味を付け足して、文全体のSV…、より細かくいえば、そのなかのVにかかる副詞にする役割をしています。

 「名詞節」と「副詞節」ですから、働き方は大きく違いますが、どちらも「文SV…」を、より大きな「文SV…」へと「接続」する働きをしているので「接続詞」と呼ばれているのです。

 ここで文全体の中心となるSVを「主節」、接続詞によってまとめられるSV、本テキストの言い方では「sv」を「従属節」と呼ぶことは覚えておきましょう。両者は「主人」と「従者」のような関係にあるのです。

 ここまでで接続詞は「文SV…」をまとめて「従属節」とし、なんらかの意味を付け加えて、より大きな主節につなげる機能を果たしているだけで、「節の内部ではなんらの役割をもっていない」ことに注意しましょう。それが次に登場する「関係詞」との違いなのでした。

9-2、関係詞(関係代名詞)

 続いて、関係詞を見ていきましょう。

 本章の最初で述べた通り、「接続詞」は「節の中でなんらの役割を持たない」のに対して、「関係詞」は「節の中でなんらかの要素の代わりをするという役割を持つ」という違いがあります

 「関係詞」は、「接続詞」同様、「文と文を接続する」役割を持ちますが、それと同時に、それがまとめる節のなかで「なんらかの要素の代わりとして働く」という性質を持ちます。

 ここではその中で一番大事な「関係代名詞」を見てみましょう。関係代名詞は、名前が示す通り、節の中で「名詞の代わり(代名詞)として働く」のです。このことを二つの例文に即して見ていきましょう。

(1) I met the politician who is popular in Hokkaido.

この例文は以下のような成り立ちでできています。

I met the politician. The politician is popular in Hokkaido.
私は政治家に会った。その政治家は北海道で人気がある。

これを一つにまとめて、「私は「北海道で人気がある」政治家に会った」にしたい。

これは「北海道で人気がある(The politician is popular in Hokkaido.)」という「後ろの文」を、「前の文(I met the politician.)」に、その一部としてくっつけること。つまり、前の文が「主節」、後ろの文が「従属節」になる。

「従属節」になる後ろの文の中で、「主節」になる前の文と重複している「the politician」を関係代名詞「who」に変え、前の文の「the politician」にくっつける。

I met the politician who is popular in Hokkaido. ができあがる。

 ここで関係代名詞「who」は節をまとめて二つの文を繋げていると同時に、「節の中でthe politicianの代わりをする代名詞」として働いていることに注意しましょう。

 そのため、whoより後ろを取り出すと「is popular in Hokkaido」と「主語となる名詞が欠けた文」になっているのです。名詞がwhoに代わってしまったのですから。

 そして、何より強調したいのは、「関係代名詞がまとめる節は何節か」という問い、いいかえれば、それは「どの品詞として働いているか」という問いです。

 関係代名詞節は、the politicianという名詞を修飾しているのですから、形容詞節です。そして、関係代名詞によって修飾される名詞は「先行詞」と呼ばれます。

 形容詞である以上、関係代名詞節がどんなに長くなろうと、その働きは「a cute cat」の「cute」と同じなのです。

 このことは、どれほど強調しても、強調しすぎるということはないほど、重要なことです。

(2) I am reading the book which I bought yesterday.

この例文も同じような手順でできています。

I am reading the book. I bought the book yesterday.
↑私は本を読んでいる。私はその本を昨日買った。

この文を一つにまとめて「私は「昨日買った」本を読んでいる」にしたい。

これは「私はその本を昨日買った(I bought the book yesterday.)」という後ろの文を、「私は本を読んでいる(I am reading the book.)」という前の文にくっつけること。つまり、前の文が「主節」、後ろの文が「従属節」となる。

「従属節」になる後ろの文の中で、「主節」になる前の文と重複している「the book」を、関係代名詞「which」に変え、前の文の「the book」にくっつける。
 ↓
I am reading the book which I bought yesterday.

 くどいようですが、関係代名詞が、文と文を結びつける働きをしていると同時に、節の中で代名詞として働いていることを確認してください。which以下には名詞が欠けているのです。

 そして、こちらも繰り返しになりますが、関係代名詞節は、先行詞を修飾する「形容詞節」です。

 では、例文①と例文②は何が違うでしょうか。違うのは、関係代名詞になった名詞がもともと果たしていた役割です。

 例文①では、もともと主語Sだった語が関係代名詞に代わり、例文②では、もともと目的語Oだった語が関係代名詞に代わっているのです。

 この違いに応じて、例文①のwhoは「主格の関係代名詞」、例文②のwhichは「目的格の関係代名詞」と呼ばれます。

(1)I met the politician who is popular in Hokkaido.

(2)I am reading the book which I bought yesterday.

 この二つの違いはどうでもいいものではありません。主格か目的格かで、使える関係代名詞に微妙な違いがあるだけではなく、目的格関係代名詞には普通省略されるという特徴があるからです。

 (1)I met the politician who is popular in Hokkaido.
 ↓
 (1)I met the politician is popular in Hokkaido. ←これは無理!

 (2)I am reading the book which I bought yesterday.
 ↓
 (2)I am reading the book I bought yesterday. ←こちらの方が自然!

 なぜ、目的格関係代名詞だけが省略できるのでしょうか。それは目的格の場合、主節と関係詞節との「切れ目」がわかりやすく、省略しても間違えることがないからです。

9-3、関係詞(関係副詞)

 「関係詞」は、「接続詞」同様、「文と文を接続する」役割を持ちますが、それと同時に、それがまとめる節のなかで「なんらかの要素の代わりとして働く」という性質を持つのでした。

 「関係代名詞」に続く「関係副詞」は、節の中で「副詞の代わりとして働く」のです。

 I will visit the town where I was born.
 I remember the day when this war broke out.
 I don’t know the reason why she treats me so coldly.
 I will teach you the way you can lose weight.

 「関係副詞」には、場所を表す先行詞につくwhere、時間を表す先行詞にwhen、「理由(reason)」につくwhy、「仕方・方法(way)」につくhowの4種類あります1)とはいえ、the wayとhowはどちらかが必ず省略されるので、この表現は適切ではないのですが。

 名詞である先行詞につくのですから、どれも関係代名詞と同様、「形容詞節」で、働きは「a cute cat」のcuteと同じです。「関係副詞」という名前に惑わされないでください。

 「関係副詞」とは、「節の中で副詞として働く」という意味で、節全体としては文の中で「形容詞」として働くのです。

 また関係代名詞との違いとしては、関係代名詞は名詞の代わりになるのに対し、関係副詞は副詞の代わりなので、「節の中は名詞の欠けがない完全文となる」ということです。もちろん、副詞が欠けているのですが、副詞はMなので、文自体は成立しているわけです。

I know the town where my mother was born.
↑where以下は完全文(名詞が欠けていない)

I remember the town which I visited 30 years ago.
↑which以下はvisitedの目的語が欠けている。(目的格関係代名詞なのでwhichは省略した方が自然)

 ところで、whichやらwhereやらが、節の中にもともとあった何かの代わりをするというのは、疑問詞と似ているなと思った人もいるかもしれません(第2.5章を参照)。

 実際その通りで、だから、「疑問代名詞・疑問副詞」と「関係代名詞・関係副詞」と、名前も似ている(し、単語もほぼ同じwhat、which、where…)わけです。そして、疑問形容詞があったのと同様、マイナーではありますが、関係形容詞というものも、存在するのです。

9-4、英語の「節」をどう捉えるか

 以上で、「接続詞」「関係代名詞」「関係副詞」を見てきた。「接続詞」と「関係詞」の違いは、それが「節の内側」で何らかの働きを持つかどうかによるものだった。

 「関係代名詞」は節の中で名詞の代わり、つまり、「代名詞」として働き、「関係副詞」は節の中で副詞の代わりとして働く。それに対して「接続詞」は節の中では何らの働きももたない。

 次に、「節の外側」に目を向けると、「節が全体として何の品詞として働くのか」という問題が見えてくる。「関係代名詞」と「関係副詞」は、先行詞と呼ばれる名詞を修飾するため「形容詞節」となります。

 それに対して、接続詞は「名詞節(上の例では、that)」と「副詞節(上の例では、if)」になるのでした。

 そして、例えば、このifには、「もし〜ならば」という「仮定」の意味が含まれていたのでした。

 以上から、「節」を作る語については、以下の三つの観点から整理して学習するべきだということがわかります。

(1)それは「節の中」でどのような役割を果たすのか。

(2)それは「節の外」に対して、全体として何の品詞として働くのか

(3)それはそれ自体でどのような意味を持っているのか。

 以下では、この三点に注意しつつ、学習を進めてください。

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第8章 準動詞
第10章 名詞句 To 不定詞(1)・動名詞

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References   [ + ]

1. とはいえ、the wayとhowはどちらかが必ず省略されるので、この表現は適切ではないのですが。
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