第8章 準動詞

 本章では「句」をなすものの中心である「準動詞」を概観します。「英文法の地図」でいうと、「句」の領域の大半を占めている、「to V」と「Ving」と「V p.p.」のことです。

 ここから「準動詞」が「句」をなすものの「中心」であることが一目で分かるはずです。それ以外に句を作るものは、地図上には、「前置詞句」しかないですから。

8-1、「準動詞」

 さて、「to V」と「Ving」と「V p.p.」という、互いにかなり異なるものが「準動詞」と一括して呼ばれているからには、それらにはなんらかの共通点があるはずです。それはなんなのでしょうか?

 「準動詞」とは、「動詞の形を少し変える(to V、Ving、V p.p.)ことで、動詞を別の品詞、つまり、「名詞・形容詞・副詞」として働かせるもの」なのです。

 動詞は、そのままでは、動詞なのですから、文の中でVとしてしか働くことができません(地図の矢印を確認してください!)。

 とはいえ、例えば、動詞を「Vすること」と名詞化して、主語や目的語にしたい場合もあるでしょう。「野球をすることは楽しい」などと。

 そこで、英語では、動詞に、toをつけたり、ingをつけたりすることで、「名詞・形容詞・副詞」として働けるようにして、SやOやCやMとしても機能させる仕組みが存在しているのです。それが「準動詞」だというわけです。

8-2、「まとまり全体」と「まとまりの内部」

 さて、「準動詞」は、いまや動詞ではなく、「名詞・形容詞・副詞」になったわけですが、もともと動詞であり、名前が示す通り、「動詞に準ずるもの」でもあります

 したがって、これが極めて重要なことですが、準動詞は、「まとまり全体」としては、文の中で「名詞・形容詞・副詞」として、その結果として、SOCMとして働くのと同時に、「まとまりの内部」では、やはり動詞であり、副詞によって修飾されたり、oやcなどを後に従えたりすることができるのです(oとcが小文字なのは、文の中心となるOやCと区別するため)。

To keep my room clean everyday is difficult for me.

 ここで、to keep my room clean everydayは、「まとまり全体」としては、文全体の中で主語として働いているのですから、「名詞」です。

 しかし、「まとまりの内部」に注目してみると、keepの後ろに「名詞:my room」「(限定用法でない)形容詞:clean」と2つの要素が続いており、「my room = clean」が成立しますから、典型的な第5文型vocが成立しています。

 さらに、このkeepはeverydayという「副詞」によっても修飾されているのです。

 ここで、第3部の冒頭で「句」や「節」が「英文の構造を重層的にしていきます」と述べたことを思い出してください。この「重層的」という言葉は、適当に選んだ言葉ではないのです。

 「句」や「節」は、「英文の構造」を、私に言わせれば、「複雑」にすることはありません。英文の構造は「5文型」しかなく、それは「句」や「節」がいくら出てこようが変わりがないのです。

 ただ、「句」や「節」は「英文の構造」を「重層的」にはします。というのは、先の例文で見たように、準動詞を使うことによって、例えば、文全体のSの中に再び「文型の構造」が埋め込まれることになるからです。

To keep my room clean everyday is difficult for me. 
→文全体は第3文型SVC、そのSの中に、vocの第5文型の構造が埋め込まれている。

 その「重層性」ないし「入れ子構造」は、マトリョーシカ人形に似ています。文全体がまず5文型の構造を持っており、その一部、例えば、SやOやCのなかにまた5文型の構造が埋め込まれているのです。

 さて、前置きが長くなりました。準動詞は具体的には「to V」の形を持つ「to不定詞」と、「Ving」という形を持つ「動名詞」、そして「Ving」「V p.p.」の形を持つ「分詞」に区分されます。

 ここでは、「名詞・形容詞・副詞」と、多様な用法を持つ「to不定詞」だけを簡単に取り扱います。他のものは第10章以下で個別に扱います。

8-3、to不定詞

 to不定詞は、「to + 動詞の原形(V)…」という形をしており、「名詞」「形容詞」「副詞」のすべての働きをするという、万能選手です。

 「名詞」「形容詞」「副詞」のそれぞれの用法について詳しくは10章以下に譲り、ここでは、不定詞すべてに共通する点だけを考えます。

 具体的には、「意味上の主語」「時制」「否定」です。

 「to不定詞」は「準動詞」として、やはり、もともとは「動詞」ですから、やはり「主語」もあれば、「時制」もあり、「否定」される場合もあるのです。

8-3-1、「意味上の主語 for s to V」

 to不定詞の「意味上の主語」は、それが「文全体の主語S」と違う場合のみ、「for s to V」という仕方で明示されます。

I want to play baseball.

↑to playの「意味上の主語」は「私」で、主語Sと一致しているので、明示されない。

「私は野球をすることを欲する」

There is no possibility for her to win the prize.

↑文全体の主語Sは「possibility」、「to win the prize」の「意味上の主語」は、それとは違うので、「for her to win…」と明示した。

「彼女が賞を勝ち取る可能性はない」 

8-3-2、「時制 to have V p.p.」

 to不定詞は、文全体の動詞Vより「以前の時間を表現する」場合に、「to have V p.p.」という、「to V」と「完了形」の合わせ技、「完了不定詞」となる

He is said to have been rich ten years ago.
↑「十年前にはお金持ちだった」と彼は「いま言われている(is said)」

8-3-3、「否定 not to V」

 To不定詞を否定したい場合は、「to Vの前にnot/neverをいれる」

Be careful not to make mistakes in the exam.
「試験でミスをしないように注意しなさい」

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第9章 接続詞と関係詞

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