以下、ネタバレであらすじを要約する。
第一部「地球とオーバーロードたち」では、人類のもとに、人類を圧倒的に凌駕する科学力を持つ異邦人「オーバーロード」が出現。オーバーロードの圧倒的な力を背景とした善導のもと、人類は平和な世界連邦へと統一されていく。
この過程で問題になったのはオーバーロードが姿を見せないということである。それが地球側の不信を増長させていたのだ。
オーバーロードの地球総督カレランと唯一接触できる国連事務総長ストルムグレンがカレランの姿を暴こうとする。これは果たせなかったが、事態を重く見たカレランは50年後に姿を見せることを約束する。
第二部「黄金時代」では、オーバーロードのおかげで世界平和を達成した人類の「黄金時代」が描かれる。それは確かに平和で満ち足りた時代だが、本質的な探求が死に絶えつつある時代でもある。どうせオーバーロードが全てをわかっているなら、誰も本質的な探求をしようなどとは思わないのだ。
この状況に抗する形で、オーバーロードさえいなければもっと花開いていたはずの宇宙への情熱を胸に抱く青年ロドリクスは、彼らの宇宙船に密かに乗り込んで、彼らの母星へ赴く方策を実行に移す。だが他方、地球ではそんなことより重大な変化、「トータル・ブレイクスルー」が始まりつつあった。
第三部「最後の世代」は、この「トータル・ブレイクスルー」を描き出す。ここでオーバーロードの限界も明らかになる。その上にオーバーマインドがいるのだ。
オーバーロードは科学的な知の発展の最終形態であり、それは個体性を保ちながら、優れた知性を持つが、もはや進歩しない。オーバーマインドは超自然的な精神性の発展の最終形態であり、もはや個体性を持たず、統一体として宇宙を支配する。オーバーロードはそのしもべに過ぎない。
オーバーロードはもはや進歩しない行き詰まりにいるが、人間はオーバーマインドと一体化する方向へ進化する—「トータル・ブレイクスルー」—可能性を秘めており、オーバーマインドによって与えられたオーバーロードの使命は、これを正しく成就させることだったのである。
というのも、宇宙の多くの種族が、まず知性と科学技術を発達させていく中で核戦争などで自滅し、それを乗り越えたとしても、この「トータル・ブレイクスルー」をやり遂げることは少なかったのだ。それは破滅に通じるか、あるいはその前に引き返しが生じて、満ち足りた自足性への停滞に終わることの方が多いのだ。
最終場面、宇宙旅行が生み出す時差のために80年ぶりに地球に帰還したロドリクスの眼前に広がっていたのは、自らを超えるものを生み出し終点に到達した旧人類が自殺や寿命で死に絶え、他方では新たに生み出された超人類が旧人類には全く理解不能な統一体としての活動を地球上で繰り広げている事態だった。
最後の最後、この超人類はオーバーマインドとの一体化を開始し、そのためのエネルギーとして地球は完全に分解される。オーバーロードはその前に退避したが、もはや終わりゆく種の最後の一人としての死を受容したロドリクスは、その場に残り、オーバーロードたちにその場面を伝えつつ、地球とともに分解されつくしたのだった。